イグニッションコイルの役割

スパークプラグを使用した内燃機関において、圧縮行程にある燃焼室内で放電させるためには、20,000~35,000Vもの高電圧が必要になります。イグニッションコイルは、12Vのバッテリー電圧をスパークプラグの放電に必要な高電圧に変換する、変圧器の一種です。基本的に1次コイル・2次コイル・コア(鉄心)で構成され、それらの部品間は絶縁を確保するためにエポキシ樹脂がケースに充填されています。

  • 1次コイル:約0.3~0.6mmの電線を約100~200回巻いたもの
  • 2次コイル:約0.03~0.06mmの細い電線を約10,000~20,000回巻いたもの
  • コア(鉄心):鉄系の金属で、1次コイル、2次コイルの軸となるもの

※コイルとは、電子部品のひとつで、電線を巻いたものです。

ペンシルコイル

イグニッションコイル2

ブロックコイル

イグニッションコイル3

イグニッションコイルの高電圧発生原理

外観形状や出力端子数の違いなど、イグニッションコイルにもいろいろな種類がありますが、高電圧発生原理は全て同じです。1次コイルは、イグナイタ(スイッチ)を介してバッテリーにつながっています。まずECU(エンジン制御ユニット)がイグナイタをON状態にし、1次コイルに電気を流します。すると1次コイルの軸となっているコア(鉄心)に磁束と呼ばれる磁力線の束が発生し、コア(鉄心)は電磁石となります。その後、ECUがエンジン点火タイミングと判断すると、イグナイタをOFF状態に切り替え、1次コイルへの電流を停止します。結果、コア(鉄心)は電磁石ではなくなり、コア(鉄心)内部の磁束もなくなります。コア(鉄心)内部の磁束が急になくなると、同じコア(鉄心)を軸としている2次コイルには、電磁誘導※により、1次コイルと2次コイルの巻き数比に応じ、高電圧が発生します。2次コイルで発生した高電圧により、スパークプラグのギャップ間に火花が飛び、混合気(ガソリン+空気)の燃焼を引き起こします。

※コイルは、その中を通る磁束が変化した時に電圧を発生させる性質を持っています。この電圧発生現象を電磁誘導と呼びます。
なお、コイルに発生する電圧は巻き数に比例して高くなるため、イグニッションコイルでは2次コイルの巻線を増やし高電圧を発生させています。

一般的なイグニッションコイルの接続回路図
イグニッションコイル4

品番の見方

NGKイグニッションコイルは、大きく分けてブロックコイルとペンシルコイルの2種類に分かれ、製品カテゴリーでは3分類になります。

イグニッションコイル5
ブロックコイル[2出力タイプ]
イグニッションコイル6

2つの出力を備えたイグニッションコイルで2つのスパークプラグに高電圧を供給する事ができます。プラグコードは、スパークプラグと同数必要になります。

※2つのブロックコイルをブラケットに取り付け、1ユニットとしたものもあります。

ペンシルコイル[2出力タイプ]
イグニッションコイル7

2つの出力を備えたイグニッションコイルで2つのスパークプラグに高電圧を供給する事ができます。イグニッションコイルは、1つのスパークプラグに直接取り付けられ、もう一つのスパークプラグにはプラグコードを使用する事で取り付けが可能になります。

ペンシルコイル[1出力タイプ]
イグニッションコイル8

イグニッションコイルは、それぞれのスパークプラグに直接取り付けるため、プラグコードは必要ありません。現在、自動車メーカーに最も採用されているタイプです。

交換の必要性

こんな時は、イグニッションコイルが劣化、もしくは故障している可能性があります。

イグニッションコイル9 イグニッションコイル9
イグニッションコイル10 イグニッションコイル10
イグニッションコイル交換時は、
全気筒交換をおすすめします。

ある気筒でイグニッションコイルの不具合が発見された場合、他気筒のイグニッションコイルも劣化が進んで、早期に不具合が発生する可能性があるため、全気筒交換をおすすめします。

イグニッションコイル11
イグニッションコイル交換時は、
スパークプラグのチェックもおすすめします。

消耗したスパークプラグを使用し続けると、要求電圧が高くなり、イグニッションコイルへの負担が大きくなります。故障の要因になる可能性があるため、イグニッションコイルの交換時は、スパークプラグのチェックもお願いします。

イグニッションコイル12

取り扱いの注意

  • 1. 点検・交換は必ずエンジンを止めてから行ってください。
  • 2. プラグホール周りにオイル等の付着・漏れがないか確認をお願いします。オイル付着・漏れは故障の要因になります。
  • 3. 各自動車メーカーのサービスマニュアルに従い、点検・交換を行ってください。
  • 4. コネクタの脱着は慎重にお願いします。コネクタ部分を破損させてしまうと導通不良等の要因になります。
  • 5. 落下させたり、衝撃を与えると亀裂や内部部品が破損する恐れがあるため、落下した製品は使用しないでください。
  • 6. 本書に記載されている正しい品番のイグニッションコイルをお使いください。
  • 7. 本書のイグニッションコイルを本来の目的以外には、使用しないでください。
  • 8. 保管する場合は、高温多湿を避けてください。
  • 9. エンジンチェック(MIL)ランプが点灯したときは、イグニッションコイル交換前(または交換後)に、サービスマニュアル等に従い、必ずダイアグ(自己診断/OBD)のエラーコードを消去(リセット)してください。エラーコードの消去を行わないと、エンジンチェックランプが消灯しない等のトラブルに繋がる可能性があります。
エラーコード消去作業手順の一例
  • 1
    エンジンチェック(MIL)ランプ点灯(整備入庫)
    イグニッションコイル13
  • 2
    故障診断機(コードリーダー・スキャンツール等)による診断(エラーコード読み取り)
  • 3

    イグニッションコイルのエラーコード表示を確認

    ※イグニッションコイル以外の故障、または複数表示の場合もあります。

    故障診断機/スキャンツール例

    イグニッションコイル14
  • 4
    故障したイグニッションコイルの交換
  • 5

    故障診断機によりエラーコード消去

    ※必ず消去を行ってください。

    イグニッションコイル15
  • 6

    試運転(MILランプ消灯確認)

    ※再点灯の場合は、再度「2」へ

    イグニッションコイル16
  • 7

    試運転(MILランプ消灯確認)

    ※上記はエラーコード消去作業の一例です。実際の作業は、必ず各自動車メーカーのサービスマニュアル等に従ってください。

診断機でのエラーコード一覧
イグニッションコイル
異常項目
Pコード
ランダム/複数 シリンダーのミスファイアを検知 P300
シリンダー1~12のミスファイアを検知 P0301、P0302、P0303、P0304、P0305、P0306
P0307、P0308、P0309、P0310、P0311、P0312
イグニッション/ディストリビューター・エンジン回転数入力回路の異常 P0320
イグニッション/ディストリビューター・エンジン回転数入力回路の範囲/機能不良 P0321
イグニッション/ディストリビューター・エンジン回転数入力回路の信号がない P0322
イグニッション/ディストリビューター・エンジン回転数入力回路の信号が断続的 P0323
イグニッション・コイル一次側/二次側回路の異常 P0350
イグニッション・コイルA~L 一次側/二次側回路の異常 P0351、P0352、P0353、P0354、P0355、P0356
P0357、P0358、P0359、P0360、P0361、P0362

※上記は、一例です。詳しくは故障診断機のマニュアルに従ってください。

注意事項
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